リレーエッセー 第8弾

国際協力、ボランティアについて:ドミニカ共和国で感じたことから

NY支部 大濱里美 学49KA

2006年3月、春休みを利用してドミニカ共和国出身の友人Altagraciaが企画した、彼女の母国への10日間の旅に参加しました。 彼女は、貧困家庭を支援することを目的としたNPO(非営利組織)を自ら立ち上げ、その初の支援対象を決めるために、人道目的と文化交流を合わせた旅を企画したのでした。 旅の内容は貧困地区、孤児院、政府系機関や大学訪問、植林活動、TV出演、そしてカリブ海での海水浴など盛りだくさんでしたが、このエッセイでは、まずこの旅で私が見てきたことのなかでも特に印象に残っていること―貧困という現実―について簡単に紹介した後、国際協力、ボランティアについての私なりの考えを述べたいと思います。

ドミニカ共和国での経験

NYから3時間半ほどでドミニカ共和国の首都、サントドミンゴに到着。 空港を出たとたん、街の中心地へと向かう高速道路も、そして周りの景色も、真っ暗闇で車のヘッドライトの明かりだけが頼りでした。 ドライバーによると、電力不足のため、電気供給は常時不安定とのこと。 首都の主要高速道路でさえ、この様子です。 この先、どんなことが待っているのか? 特に不安はなく、ありのままを知っていこうと覚悟しました。

翌日向かった先は、首都から離れた山中の貧困地区にあるコミュニティ。 小さな簡易診療所や、学校、職業訓練所があるものの、資金不足で設備もままならず、指導員不足のため訓練所は閉鎖中とのこと。 寄付金により、コンピュータールームが新しく設けられたところでしたが、コミュニティの外へ出れば、皆徒歩で山道を移動しており、電力も不安定な中で、どれほどの生徒が集まり、どれだけこのコンピューターが活用されるのか。 寄付金の用途、優先順位の決定方法などに疑問を持ちました。

写真(1):焚き木を利用して食事の準備中

水道もガスも通ってない。 それでも、水は井戸から汲み出し、火は焚き木を利用して、おもてなしの食事を提供してくれました。 (写真(1)) 食事後にコミュニティの住人と輪になって実施した聞き取り調査では、「将来を担う子どもたちには、教育を受けさせてやりたいが、バス代さえ払えないために学校に通えない。」 「救急車がなく、病気になっても診療所へ到達するまでに症状が悪化するケースが多い。」 など、皆の様々な懸念が打ち明けられたのでした。

写真(2):学校へ出発する前の孤児院の男の子たち

また別の日には、HIV/AIDSの子どもたちを収容している孤児院や男子専用カトリック系孤児院、そして障害児童を対象にした孤児院などを巡りました。 訪問者を迎えて、興奮してはしゃぎまわる子どもたち。 でも、カトリック系孤児院の男の子たちに限っては、皆、行儀良く振舞っていました。 (写真(2)) ここでは、資金集めの一環として、みんなで綺麗な色の糸でロザリオを編み、寄付を募っているとのこと。 でも、孤児の数は増え続ける一方で、既存の建物では収容しきれなくなったために新しい施設を増設しようとしたところ、資金不足のため、建設途中のコンクリートと鉄の骨組みが剥き出しのまま、山の中で放置されていました。 (写真(3))

写真(3):未完成のまま放置された孤児院施設建設予定地

国際協力・ボランティアについて

このような現場を見て、私に何ができるだろうと考えさせられました。 もし仮に、資金が集まって施設が完成したとしても、その後の運営に必要な、長期的な資金の確保はどうするのか? 受け入れる側だけでなくて、孤児が発生する直接的、間接的な原因についても解決していかなければ状況は変わらない。 そのような中で、私が今すぐにでも出来ることといえば、できるだけ多くの人に、ここで起きていることを伝えることだと思います。 世の中で、その存在さえ気づかれないまま、実際に起きていることは沢山あります。 まずはそれらを認識することが国際協力、ボランティアにおける第一歩だと思います。

でも、知るだけでは何も始まりません。 元国連難民高等弁務官で現在JICA理事長を務める緒方貞子さんは、「…学びあうことで連帯感が生まれるのです。 国際的な視野を広げ、自分が支援できるときは支援を、交流できるときは交流をしてください。 知って、感じて、それを温めているだけでなく、発言して下さい。 平和というものは、ただ抽象的に『平和が欲しい』と願ったからといって、来るものではないのです。」 (読売新聞2003年2月14日)と言っています。 知るだけではなく、行動につなげることが、さらに大きな一歩になるのです。

行動するといっても、決して大掛かりなことは必要なく、お小遣い程度でも募金してみるとか、国際協力を実施している団体のイベントや展示会、活動報告会などに参加してみるとか、または外大の皆さんであれば、通訳ボランティアとして貢献してみることなど、身近な方法で行動する機会はたくさんあります。 募金する際には、自分のお金がどう使われているのか、しっかり活動に充てられているのかなどを確認し、信頼できる団体や組織を選ぶ必要があります。 インターネットやパンフレットなどでじっくり活動をチェックしてみるのも、「知る」一歩になるでしょう。 私もいくつかの日本の団体のホームページやニュースレターの英訳ボランティアに参加しています。 これはメールさえできれば、世界中のどこからでも参加・貢献できるボランティア活動の一つです。

今日、「NGO、NPO、貧困、難民、教育、開発」などのキーワードをインターネットで検索すると、多くの国際協力・ボランティア団体を見つけられます。 そして各団体のホームページでは、それぞれが取り扱っている分野における課題の一面を学ぶことができます。 注目を集めるために誇張されているかもしれない。 特異な例かもしれない。 でも、「知る」きっかけにはなります。 自分の関心事項・分野を知ったなら、より深く追求していく方法はいくらでもあります。

知るだけでなく、行動すること。 世界のどこにいても、国際協力・ボランティアは可能です。 無理せず、力まず、自分のできる範囲内で参加できる機会は、豊富にあります。

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