「ネコの恩返し」
事業組織部長 塚野 和男 (学10EB)
「外ネコ」の世話をしている女房の手助けで、「ネコえさ強力(ごうりき)」を始めてもう3,4年はたつだろうか。
もともとネコ好きの女房は、自宅近くの公園に捨てられている子ネコを見つけると連れ帰り、一時は7匹にもなったが、それにも限度があるので外で面倒を見るようになり、知り合いの依頼もあってだんだんその手を広げていった。
10年ぐらい前から、毎朝5時に起きてリュックに缶詰と固形のエサを詰め込み、両手にもえさ袋を抱えていざ出発。
自宅から摩耶山ふもとの灘丸山公園に至る間の5つのポイントに集合している総勢40〜50匹の外ネコに朝食を提供するボランティア活動だ。
ただ、えさをやるだけでなく、新入りのネコがいれば、オスには去勢、メスには避妊手術を施し、怪我や病気のネコを見つけると入院させるなど、いま生きている個体の面倒を見ながら今以上は増やさないという、最近、各地で進められている「地域ネコ」運動である。
でも、生まれたての捨てネコについては、獣医さんに安楽死を頼まざるを得ない、厳しい選択を迫られるケースもある。
生来、人一倍頑強な女房ではあるが、さすがに70歳近くにもなると毎日の重荷を背負い灘丸山公園までの往復は負担が大きく、荷物運びはついに私にお鉢が回ってきたという次第。
春夏秋冬、雪か嵐か大雨以外は毎朝、15キロほどのリュックを背負っての灘丸山公園詣でが続く。
自宅はJR神戸線沿いにあるので、そこから都賀川ぞいに北上。
山手幹線を横切り、阪急線のガードをくぐるまではまだ平坦な道だが、そこからはだんだんと坂道になる。
山麓線から北の道は、神戸外大旧学舎前が地獄坂と呼ばれていたが、傾斜はその比ではない。
しかも距離が長いときては途中、休憩を入れないと上りきれない。
それでも、丸山のふもとのえさ場にリュックを置いて公園にあがると、一度に疲れが吹っ飛んでしまうから不思議である。
それもそのはず、灘丸山公園は、神戸で撮影する映画のベストポイントに選ばれているほど眺めが良い。
眼下に広がる東神戸、阪神間さらには大阪、泉州、紀州と、視界いっぱいの豊かな展望が楽しめる。特に、生駒、信貴連山からのサンライズはすばらしい。
季節や天候、時間によって微妙に色合いを変えていく空、雲、太陽の様は月並みな表現だが筆舌に尽くしがたい。
それまでの夜更かし、朝寝坊と日の出とは縁のない暮らしの私にとって、それはまるで別世界からの贈り物となった。
一度、通風の発作を起こしてから健康診断のたびに尿酸値が高いと指摘され、減量を勧められていたのも「ネコえさ強力」を始めるきっかけのひとつであった。
毎日の約1時間ばかりの早朝ウオーキングを半年も続ければ減量できると期待したが、70キロ超の体重は一向に減らない。
それでも健康面では成果が大きく、冬になると必ず、一度は引いていた風邪もぴったりとまり、10年目になる2度目の現在の仕事では、病休は一度もない。
それに、ここへ来て、減量を強化するために公園で始めた50回のスクワットの効果が抜群で、長らく難攻不落であった70キロの壁を破り、68キロにまで減量することができた。
もう、こうなればしめたもの。
理想体重の65キロを目指して、さらに「ネコえさ強力」を続けなければ。「PPK」(ピン・ピン・コロリ)作戦貫徹のために。
「なさけはネコのためならず」