リレーエッセー 第78弾

熊と八のテニス大会始末記

塚野 和男(学10EB)

(トン、トン、トン、トン)と太鼓の出囃子。


えー毎度ばかばかしいお話でご機嫌をお伺い申し上げます。

本日は、「熊と八のテニス大会始末記」というお話で皆様のお耳を汚そうということで、最後までお付き合いをお願い申し上げます。


ご隠居 おや、熊さんかい。ちょうどいいところへ来たね。まあ、お茶でもどうだい。
こんちは、ご隠居さん。のっけからお茶を出してくれるというのは、きょうはどういう風の吹き回しだい。おまけに茶菓子もついているじゃねーか。
ご隠居 いや、なに、席亭からね、熊さんの近況を聞いてほしいということでね、お前さんに来てもらおうと思っていたところだよ。
じゃあ、「飛んで火に入る夏の虫」というのは、このことだな。
ご隠居 そういうことになるか。まー、いいじゃないか。ところで、お前さんの近況はどうなんだい。
蚊取り線香なら、もう、涼しくなって、とっくに仕舞っちまったよ。
ご隠居 「金チョー」じゃないよ、近況だよ。
それなら、うちの水槽の中で泳いでいらあーな。
ご隠居 「金魚」じゃなくて、キンキョー。お前さんの近頃の出来事を聞かせてほしいということだ。
なんだい、そういうことかい。それなら、こないだ、電車の中で100円玉をおっことして、拾おうと思ってしゃがんだら、おもわず一発落としてしまったんだが、これが、俺の近頃の出来事だ。
ご隠居 汚いねー、周りのお客さんに迷惑をかけたらだめじゃないかい。いいえね、お前さんの、近頃の珍しい話でもいいから聞かせてもらったらいいんだよ。
珍しいといえば、去年9月に、神戸市テニス大会にはじめて出てしまってね。75歳以上のダブルスにエントリーしたと思いねー。 ダブルスだから相棒がいるんだが、これが79歳と俺より年上で、八という名前なんだ。 神戸ローンテニスクラブのスクールで練習していたところ、俺の右の強打にほれ込んだみたいで、ペアを組んでほしいといわれてね、まあー、年上から頼まれたらいやといえねーのが俺の性分だ。
ご隠居 そんなところで威張るんじゃないよ。そうするてーと、お前さんが76歳だったから、79歳の相棒だと最高のオールデストコンビだね。
そうなんだ。75歳以上のクラスは、俺たちだけの申し込みで、試合になんねーということで70歳のクラスに入れられてね、ここには2組がいて、何とか総当たりの試合ができたんだよ。
ご隠居 ほう、そうかい。それで、試合の結果はどうだったんだい。
それがね、八は、緑内障で右ひざにサポーター巻。俺は、昔、スキーで骨折して右足が2センチ短いと来てるから、まるで、びっことめくらのコンビみたい。おまけに初めてのペアということで、動きが悪くてセンターを抜かれっぱなし。どちらの試合も。3−8、3−8と、まあ、ダンゴでなくて良かったという程度だったなあ。
ご隠居 まあ、年下の相手にその内容じゃ、いいほうじゃないか。
そうなんだけれど、俺が気に入らないのは、最高齢のペアを、15分の休憩はあったけれど連続して試合をさせたことだ。もう少し敬意を払って1試合目と3試合目に、時間をおいてくれればいいのにと思ったよ。俺たちがいなければ、70歳以上の試合は成立しなかったんだからな。
ご隠居 ここで怒っても仕方がないじゃないか。ま、熊にとっては初めての経験で、よかったよかった。
試合を見ててくれていたコーチの人も、ところどころ、いいボレーが決まっていたよといってくれた。ただ、急ごしらえのペアで息が合っていなく、俺の得意の右の強打が出なかったのは残念だった。
ご隠居 そうかい。それじゃあいいところも少し出て、試合に出た甲斐もあったというもんだ。ところで、そろそろ、この話も落ちにしようじゃないか。
 いやー、試合の途中にね、俺が打ったボールがコートのそばの樹に乗っかって落ちてこなかった一幕もあったんで、そんなところから、この話には落ちがない。

お後がよろしいようで。(てんてけ、てん、てん、てんてけ、てん)


*20年来続けている私のテニス生活の一端を、「落語」仕立てでご紹介しました。
なお、文中に差別用語がありますが、落語ということでお許しください。

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