リレーエッセー 第93弾

一笑会

戸谷 紀子(修32E)

多分平成18〜9年頃だったと思うが、今となってはいつのことだったか、正確には思い出せない。 夫が仕事を通じて知り合った製薬業界の友人達と奥様方、合わせて8人位で2〜3ヶ月に一度テニスを楽しんでいた。 その中の一人で、神戸外大英米学科15期生の谷川清美氏が、「今度川柳の会を作るんだが仲間に入らないか」と誘って下さった。 夫は多忙で、私はそれまで俳句も川柳も作ったことがなかったのだが、面白そうと私だけお仲間に入れていただくことにした。


谷川氏と友人達が始められた会は「一笑会」と名付けられ、まず男性8人と女性3人で旗揚げすることとなった。 一笑というのは中心となって会をまとめて下さる師匠大河原敏冶氏の柳名である。 もっとも現在も製薬業界で活躍されている大河原師匠ご自身によれば、ご本人も川柳は素人だとおっしゃっている。 活動そのものは毎月師匠が決められるお題に沿って、メンバーそれぞれが6句を作り、月替わりの集計係にメールで送る。 集計係は順不同に並べて作家名を消した句集を全メンバーに送り、各メンバーはその中から天1句、地2句、人3句を選んで集計係に送り返す。 集計係は結果をまとめて発表する。 毎月10日ごろにパソコンに送られてくる結果を、どきどきしながら見るのが楽しい。 自分の句が互選の天に選ばれたりして、他のメンバーから「おめでとう」とメールが届いたりすると、嬉しさもいや増す。


平成21年には句集を出版しようという話になった。 そこでメンバーの榎本滋氏と瀬尾留美氏が編集担当、谷川氏が挿絵を描かれ、22年春に「一笑会句集 創刊号」が出版社を通して出された。 それを見てメンバーになられた湯浅陽子氏が、ご自宅での手作り製本をかってでて下さった。 23年以降毎年春には格安で、編集、挿絵、製本の全てがメンバーの手になる、素晴らしい句集が作成されるようになり、現在に至っている。 今年も3月には第6号が手元に届く予定だ。


会が始まって1年後には男性が1人増え、私も友人の神戸外大大学院卒の上田孝子氏を誘った。 その後も男性が1人、女性が2人増えて現在は16名。つまりこの8〜9年の間1人も辞めた人がいない。 誰も会を辞めない理由は、勿論川柳を作り続けて上達する楽しみが大きいのだろうが、一つには3〜4か月毎に開かれる句会のせいだという説もある。 句会の度に各幹事が準備する会場は、レストランにせよ料亭にせよ、毎回会費に比べて食事雰囲気共に、満足度が非常に高いのである。 昨年11月の奈良での句会に続き、来月は新年会の代わりという名目の下、大阪で句会が予定されている。


以上「一笑会」の紹介に続き、会の主要メンバーであり、楠ヶ丘会会員である谷川清美氏(仏笑)、上田孝子氏(百笑)、私戸谷紀子(遊笑)の作品を一部ご紹介させて頂きます。 三人の個性の違いをお楽しみ下さい。


仏笑作

妻につく 嘘は後から 倍返し

置き忘れ 置いたも忘れ 楽な日々

我が宿は メシ付き風呂付き 小言付き

半世紀 負けるが勝ちと 解るまで

目と耳が 弱り学んだ 減らず口

妻が指揮 僕が奏でる 破綻調

百笑作

いらぬこと 水を向けられ ついしゃべり

野暮用と 言いつつ喜々と 飛び歩く

双方が 聞き役という 長電話

利用され 役に立てたと お人よし

まず来ない いつか役立つ その「いつか」

残高と 相談しての 長寿かな

遊笑作

お見合いで 料理好きかと 訊く娘

飛びたいが 義理の重さが 邪魔をする

線引きが 難しいのよ 熟と老

置き傘を 盗られて人の 傘探す

お見舞いに 喪服持参の うちの嫁

母と嫁 どっち選ぶと 訊かれても

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