また、また、ネコの話
塚野 和男(学10EB)
このリレーエッセイでも何度か紹介したが、 私は神戸市灘区の自宅周辺で地域ネコの世話をしている女房のアシストをして、かれこれ20年ほどになる。
地域ネコというのは、飼い主のいない野良ネコがこれ以上増えないよう、 近所の人々やボランティアの手で去勢や避妊の手術を受け、たまり場で餌をもらっているネコのことだ。
京都市ではこのほど、こうした野良ネコへの餌やりについて禁止をする条例が制定されたが、 消極的ではあるが地域ネコ活動を応援している神戸市でも、野良ネコに迷惑しているという市民の間からもその声が高い。
私の友人などもその口で、フンやおしっこによる悪臭、繁殖期の鳴き声などもあるが、 最大の理由は餌のやり方のマナーに問題があるという。 野良ネコが集まる場所に餌を置きっぱなしにし、利用する新聞紙や広告紙の後片付けをしないで立ち去る、 残った餌は雨などに溶けてドロドロとなって悪臭を放ち、カラスなどが集まる原因ともなる。
こうしたことが重なると、たとえネコ好きや、動物愛護の気持ちがあったとしても反対せざるを得ないという。
一方、餌をやるネコ愛好家からすると、反対をする住民の目をかいくぐって餌をやるには、 夜陰にまぎれて手早く作業を進め、後片付けをなどしている暇などない、というところだろう。
動物愛護の気持ちを、野良ねこへの餌やりという具体的な形で実践する側と、 それにより迷惑をこうむる住民側との対立を解消するには(解消するまでにはいかなくとも、 少なくとも目をつぶってもらうには)、動物愛護家側から住民側への顔を合わせての説明など粘り強い働きかけと、 餌やりについては野良ネコが食べ終わるまで待ち、後片付けをして終わるというマナーの改善なども必要だろう。 単なるネコ可愛がりだけで餌を与えるのはだめで、餌をやる限りには、 去勢や避妊手術をしてこれ以上は増やさないという姿勢が必要で、そうした努力が反対する住民への説得材料ともなる。
女房の場合でも、餌場近くの住民から何度も反対されたり、そんなに可愛ければ自宅で飼うよう 求められたりしてきたが、その都度、動物愛護の精神に基づく地域ネコについての説明を重ね、 餌やりの際には集まったネコ全員が食べ終わるまで待ち、 きれいに後片付けをして次の場所に移るなどして住民の理解を得る努力を続けてきた。
そんな甲斐もあってか、最近ではようやく住民との折り合いが付いて苦情もほとんどなくなり、 また、女房のテリトリーでは餌場に集まる野良ネコの数が 減ってくるなどの成果も出てきて、アシスタントの私にとってもうれしい限りである。
餌やりに反対する住民のおすすめ?もあって、年老いたのやけがをした野良ネコは自宅に連れ帰り、 その数は一時、7匹にもなった。そのうち、このエッセイでも紹介したことのある 黒ネコの「トム」と片肌脱ぎの「ふうこ」は一昨年、相前後して病気となりネコ天国に旅立った。
やれやれ、5匹になったかと思ったのもつかの間、昨秋、 今度は自宅近くの公園の餌場に手術をしていないオスネコ2匹(黒ネコと混血長毛の雉ネコ)が迷い込んできた。 去勢手術を施したのち公園に帰したが、それ以来、我が家周辺をうろつきだした。 さすがに女房は自宅内にはもう収容できないものの、そのままにはしておけないとして早速 、軒下にプラスチック箱でネコハウスを設営し、 ネコたちも冬場にはカイロなども入れてもらい、安住の住処として決め込んでいる。
内ネコ、外ネコにかかわらず、これまでにかかわってきたネコには名前を付けるのが習慣で、 今度もどんな名前にしようかと考えたが、 我が家のネコ状況はもう、どん詰まり。黒ネコには「ニッチ」、長毛雉ネコには「サッチ」と名付けた。
そうこうしているうちに自宅前の公園で遊ぶ2匹に引き寄せられたのか、 今度は野良のサバネコがやってきた。耳を見ると手術をした印のVカットが入っていない。 何度か失敗したのち、やっと捕獲器で捕まえ調べてみるとこれがメスネコで、手術の際、 すでに4匹の子ネコがおなかに入っていたという。ネズミ算ならずネコ算でも危うく野良が4匹増えるところだった。 このネコには、野良ネコの保護はもうやめようかという意味合いで、「ヨシコ」と命名した。
内ネコ連中が、運動不足から肥満状態になっているのにひきかえ、 外ネコ3匹は早朝から公園内で転げまわって遊び戯れているのを見ると、 ネコたちにとってどちらが幸せかわからないと考えさせられる今日この頃である。