リレーエッセー 第33弾

スイス周遊8日間の旅

西村 逸朗(学7C)

氷河から眺めるユングフラウ(4158m)

2005年夏、スイスを旅した。 インターネットで申し込んだグランドツアー社の「スイス周遊8日間の旅」である。 イタリア旅行中の滞在地ミラノより鉄道でスイスの首都チューリッヒに向かう。 北イタリアの湖水地方の景色はすばらしい。 大小の湖と湖畔に点在するオレンジ色の家。 多くの文学者や芸術家が愛した豊かな自然美を堪能した。 マッジョーレ湖を越えるとスイス領。 アルプスの山岳地帯をぬけてスイス北部へ。 首都チューリッヒに着く。 その日はノボテルチューリッヒホテルに泊まる。

7月2日朝、ホテルのロビーに集合。 ツアーの客は約20名。 日本人は私と妻のふたりだけ。 あとはすべて外国籍の人だ。 バス内で聞いたところ、国籍はアメリカ、カナダ、オーストラリア、インド、レバノンなど。 これから同じバスで8日間の旅をする仲間たちだ。 ガイドはイタリア人ですべて英語で話す。 目的地に着くと、自由行動、バスの発車時間を聞いて、各自勝手に行動する。 旗を振って客を案内する日本の旅行社とは正反対である。 8日間でスイスを一周しようというのだから、これからの道中を考えると、少なからず不安である。 ただ、乗物の心配がないのが助かる。 個人旅行では、交通、ホテル、荷物などすべて個人で手配する苦労がいる。 こんな旅も選択肢の一つであろう。 費用の点も無視できない。

ハイジーの国へ

さて、1日目は、チューリッヒ湖を南下してサンモリッツを目指す。 途中、ヨーロッパの最小国リヒテンシュタインへ。人口3万5000名の小さな国だが、切手王国として知られ、切手マニアが注目する。 ライン川を南下して、すぐマイエンフエルト。 ハイジーの国である。ハイジーの土産物が並ぶ。 いたるところにハイジーの道があり、ハイキングコースになっている。 バスはさらに南下し、サンモリッツへ。世界最古のスキーリゾートで知られ、冬季オリンピックの顔としても有名だ。 アルプスの山とカラマツの林に縁どられた静かな町である。 休日のため、町のほとんどは閉店。 仕方なく町を下りて、サンモリッツ湖へ、湖畔を散策して、食物を買おうとしたが、期待はずれ。 ホテルでは持参のワインを飲む。

サンモリッツの斜塔

ここは、スイスの画家セガンティーニの美術館があるが、時間の関係で訪れることができなかった。 ホテルの近くの林道で偶然見つけた斜塔に魅かれ、スケッチしたのが印象的であった。 翌日は、期待のベルニナ特急にのる。 赤と白にデザインされた列車は、パノラマカーの車窓の景観が圧観である。鉄道ファンならずとも2000mの高さを上っていき、アルプスの氷河と花々が満喫できる。 列車はイタリア国境の町ティラーノに着く。ここからバスにのってルガーノへ。 翌日ルガーノから、マッジョーレ湖を渡り、2000mのシンプロン峠を越え、ツェルマット近郊のタシエに着く。

7月5日、タシエから近くのツェルマットへ。 標高1620mの小さな町だが、周囲にスイスの4000m級の高峰が29も集中する山岳都市である。 南に主峰マッタホルン(4478m)が悠然と聳えている。 古い木造家屋を連ねる町並みを、馬車が馳けていく。 ゆっくり滞在して近くの山稜を歩きたい衝動にかられる。

ベルンの時計塔

翌日は、ローザンヌへ。 ぶどうの産地として有名なヴアリス州は、レマン湖に面した傾斜地にぶどう畑がひろがる。 個性ゆたかなワインで知られ、白ワインに定評がある。 辛口の白ワインは、ワイン党にはたまらない。 町を散策してレマン湖へ。 港近くの市場が賑わい、魚介や、パン、チーズ、そして花々や野菜の店が並ぶ。 古本や骨とう品の露店もある。

翌日、ローザンヌを出発して、ベルンへ。 ベルンは、首都として政治の中心地であるが、町はこぢんまりと落ち着いた中世風の町である。 アーレ川の市街を囲むように流れ、森と水の公園の町である。 街の中心の13世紀の時計塔が印象的である。

7日目の7月7日、ルツェルンへ。 フレスコ画の描かれた古い家並が中世の面影を残す。 小さい町だが、美術館や博物館が多い。夕方、散歩していると教会で音楽の演奏をやっていた。 誰でも自由に教会に入り聴くことができる。これこそ旅の愉悦である。 いよいよ旅も終わりである。 翌日、ルツェルンを発って、チューリッヒへ。ツアーの仲間20名と別れを交わし、8日間のスイスの旅をしめくくる。 明日は列車でミラノへ。 イタリアの旅がはじまる。

  • 隣国はスイス雪渓の峠越え 逸朗
  • 露涼しアルプス山頂施療院 逸朗
  • 氷河懸け登山列車霧を攀づ 逸朗
  • 国境の旗の涼しき小公国 逸朗
  • 柳絮とぶ湖の橋上チューリッヒ 逸朗

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