リレーエッセー 第64弾

つながり

山口 恵子(学11EC)

楠ヶ丘会広報部の山口(旧姓柳田)が、リレーエッセーのバトンを受けました。

思い起こせば、そもそも楠ヶ丘会広報部の理事を最初に引き受けたのは、30年も前のことになる。当時の年齢はアラフォー。校内暴力で荒れた中学校に転任したころで、教師として最もハードであるが、また最もチャレンジした時でもあった。 結果的にはそこから得たものは大きく私の財産となり誇りとなっていることを実感している。

そんな時、外大の先輩で英語教員をしていた故小出石先生から楠ヶ丘会の広報の理事を依頼された。口説き文句は「今日あなたがあるのは外大を卒業したおかげやで」だったが、非常に説得力があり断れなかった。未だに心の中のどこかに居続け、忘れられない言葉の一つになっている。 そればかりか私自身が折にふれ切り札の言葉として後輩に使っていることに気づく。現職の間は広報部理事という名前だけで、ほとんどお役に立つことはなかったが、「できるようになったら、してくれたらいい」のお言葉に甘えていた。 退職後はその償いの意味や、故小出石氏が同窓会誌「楠ヶ丘」にかけていた熱意を受け継ぐという意義を自分なりに定め、今日まで続けてきている。同窓生から寄せられる原稿を読んだり、編集委員会の作業をするなかで、同窓の皆様とつながっていることを実感している。 いい役目だなとも思えるようになっている。

平素は気づかなくても、いざという時にこの様な人と人とのつながりの力がパワーを発揮する。17年前の阪神淡路大震災や想定外の大災害となった東日本大震災が、それを実証している。 最近の無縁社会とか会離れという社会現象が大変気になるが、これは個人情報の保護、プライバシーの権利主張が先行し、公共性というもう一方の大切な面が薄れてきたからではないだろうか。 人と人とのかかわりのなかで社会生活を送っているからには、平素からつながりの基盤を具体的なものにしておかなければならないだろう。同窓会とか地域の自治会などが、この基盤になると思う。

東日本大震災の後、無縁社会という現象が少し解消されたようにも思う。「生きている」を「生かされている」と感じることで、つながりが深められていくのではないか。

この度、何年振りかで同窓会名簿が発行されることになったが、神外大同窓生のつながりを再発見し、後輩にも伝えていけたら「楠ヶ丘会」の発展にも、もっと寄与できるのではないだろうか。


<後記>この原稿を半分程PCで作成した頃夫が入院、同時にPCの故障で、久しぶりにこのエッセーを原稿用紙に鉛筆で手書きした。締切り日前日に書き上げやれやれ。

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2024年6月5日

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